きみのこえ

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「あー…死ぬ」

 むしむしとしけっていてお世辞にも過ごしやすいといえない今日は、忌々しい夏を思い出させる。一番暑かった夏の時期に比べればきっと涼しいのだろうけれど、一度涼しくなってしまった所為か、思い出したように訪れたこの暑さは酷く堪えた。
 汗ばむ肌がべたべたするのが気持ち悪い、暑い。
 部屋の入り口を開け放ってはいるものの、待てど暮らせど入ってくる空気が清涼感を運んでくることは無く、諦めて上着を脱ぎ捨てたのがちょっと前。
 課題があったような気がするがもう知らない。夜、風が涼しくなってからすればいい。そう思って全て投げ出して床に転がったのがついさっき。この場に誰かがいれば「またそんな格好でころがって」と言われるだろうけど、それはそれ、今は三郎一人だけなのだ。
 例え今このタイミングで誰がきてそう言われても三郎は気にもしない。
 初っ端はどうであれ、今はもう五年目だ。雷蔵に迷い癖があるように、兵助が豆腐好きだと言うように、三郎が暑さに弱いことも彼らの間ではもう当たり前の一部でしかない。だから誰かにそう突っ込まれるのもすでに何時ものことで、今更取り繕う必要もない。

 あつい。

 先ほどから三郎の脳内をめぐるのはその三文字ばかり。
 午後の昼を過ぎたばかりの一番暑い盛り。下級生が水遊びをかねて、長屋のあちこちで水撒きをしてくれたからきっとその内少しはマシになる。
 そう信じて三郎は転がっている場所が温まればその隣へ、そこが暖まればまたその隣へとほぼ一定のリズムで床を移動しながら思った。

 あたまが、ぼんやり、する。

 するりと額から滑り落ちる汗を拭うのも面倒くさい。
最小限の動きで最大限の涼を得る事だけで頭が一杯だった三郎の脳裏をよぎったのは、この頭の芯がぼうっとするような感覚がつい最近味わった感覚にちょっと…ほんのちょっとだけ似ていると、そう感じながら目を閉じた。