
突如午後の授業が一こま中止になって暇を持て余した三郎が乗り込んだのは八左ヱ門の部屋だった。委員会の雑務をこなそうとする八左ヱ門の横でごろごろ寝そべりながら唸る三郎はちょっとだけ邪魔だが、原因に思い当たる節があるため、もう何も言わず好きなようにさせている。
勘右衛門と兵助が一緒に実習へと出かけて三日。出かける前に二人は「多分四日以上七日未満くらい」と言いおいて出かけていった。
二人とも実技は(座学もだが)優秀だからきっと大丈夫だろう。そう周囲は思うが、それでも三郎はなんとなく気になって仕方がないようで二人が出かけた翌日から落ちつかない。
お前五年目にもなって何を今更…とは同じろ組の生物委員の言だ。
「しかしだな八左ヱ門、考えてもみろ」
「何を。兵助だろ?今回は勘右衛門と組んでるって言ってたし。天候も良好、潜入先は知らないが単独じゃなくて合同実習だし、先生方もついてるし心配なんかいらな…」
「馬鹿!そこじゃない!」
虫かごの破損箇所を直しながらの八左ヱ門の言葉に重ねて声を上げる三郎の顔は至極真面目で、ちらりと横目でそれを確認した彼は小さく嘆息した。正直面倒くさい。
「兵助はだな、」
「あと数日で帰ってくるっつーの」
「今回女装道具を持っていったんだ!それでだ!」
「は?なんだそりゃ、三郎の気のせいじゃないのか?」
「いいや気のせいじゃない。何故ならば出かける前の兵助の荷物からおしろいの香りがだな…」
「いつから嗅覚が獣並みになった…つかなんか俺、その先聞きたくねえぞ」
「そこをなんとか!」
「わーわーわー!」
声を上げ耳をふさぎ逃げる八左ヱ門の真横をぴたりと陣取り、兵助はしっかりしていて抜け目が無いように見えるがあれでいて時折見せるうっかりさがあるから女装しているとなるとよからぬ輩に目を付けられやしないかとそこが心底心配なのだと、三郎はここぞとばかりに熱弁をふるおうとした。